介護スタート? 1カ月で一番役立ったのは「質問すること」だった

昨年の夏から、大病院へ通院する母に付き添うようになった。

でも私の中では、介護が本格的に始まったのは先月、6月だった気がしている。

どこからを「介護のスタート」と呼ぶのかは、正直よくわからない。

昨年、地域包括支援センターに一度相談したことはあった。でもその時は大きな進展はなく、ただ話を聞いてもらえて少し気持ちが落ち着いた、という感じだった。

父は5年前から認知症が進んでいる。

本人も今では「オレはバカになった」と口にする。でも対外的には絶対に認めない。おそらく認めるつもりもない。

どうしたらいいのか。

包括支援センターに相談したけれど、答えはなかった。

そもそも父に介護認定申請の話をすること自体が難しかった。2年ほど前に一度挑戦して玉砕し、「何か本当に困るまでは放置しよう」と思っていた。

ところが昨年、元気だった母に病気が見つかった。

今もなんとか普通の生活はできているが、今年に入って「いつ急変してもおかしくない」と言われるようになった。

治療薬は副作用が強く、一度は中止した。

それでも先月、半年間診てくださっている先生が代替案を提案してくださり、再び服薬を始めることになった。

一度は「薬のせいでふらつくから」と勝手にやめていた母だったが、5日間飲まずにいても変わらなかったらしい。

「もう一回飲もうと思うけど、いいと思う?」

そう聞かれた。

「私はお医者さんじゃないからわからない。お母さんが自分で決めたら?」

そう答えたら、

「飲みたいから飲む」

と言った。

83歳にもなれば、無理やり薬を飲ませることはできない。だから諦めていた。

でも半年かけて少しずつ状況は動き、今は初めて長期間服薬が続いている。

少しでも進行を遅らせられたらいいなと思う。

半年前に母が薬を飲むのをやめた時、じゃ私のこれまでの時間は何だったの?と思ったが、無駄ではなかった。

呼吸が苦しくなり、通院も負担になるだろうということで、在宅医療の導入もすすめられた。

最初、母は「先生に見捨てられた」と感じたようだった。

しかし、その先生自身が往診にも関わっている施設があると知り、安心した様子で受け入れた。

主治医から診察後に

「地域支援センターに在宅医療について相談してください」

と言われ、

そこで地域支援センターの看護師さんとつながることができた。

在宅医療のこと、介護認定のことを説明いただけたので、

父の認知症のこと、

これから先に起こりそうなこと、

思いつく限りのことを次々と質問した。

特別な解決策が提示されたわけではない。

父の認知症についても、明確な答えがあるわけではなかった。

それでも、わからないことを聞ける相手がいること。

困っている状況を理解してくれる人がいること。

それだけで気持ちはずいぶん軽くなった。

そして結果的に、そこで教えてもらったことが、その後の介護認定申請や在宅医療の手続きを進めるうえで大きな助けとなった。

また、介護認定の申請もすすめられた。

要支援になるだろうけど、早めに手続きをしておいた方がよいとのことだった。

そして話は母だけでは終わらない。

同居している父のこともある。

認知症は進んでいる。

でも認めない。

さらに、長年積み重なった夫婦関係もあって、母にとって父との生活そのものが大きなストレスになっている。

それが病気以上に体重減少の原因になっているのではないか、と考えるようになった。

母は決して少食ではない。

病院帰りに私と同じ量の食事をぺろりと食べる。

最近は調理が仕事でもある弟が大量に作り置きもしてくれている。

食べている。

でも体重は減る。

医師である姉からは、

「食べているのに維持できないのは、もうどうしようもないこともある」

と言われた。

理屈ではわかる。

でも私はまだ考えてしまう。

少しでも緩やかにできないだろうか。

まだ何かできることはないだろうか、と。

母の介護認定申請を出したあと、市役所から認定調査の日程調整の電話があった。

そこで父の状況を話したところ、

「ご夫婦一緒に認定調査しましょうね」

と提案してくださった。

実はその前の週、父の病院に初めて連絡していた。

担当医も認知機能の低下を把握していて、診断書も書いてもらえることがわかっていた。

だから父の介護認定申請書も作った。

本人には、

「お母さんの申請の都合で、お父さんの健康調査も必要だからサインして」

と説明した。

正直、どこまで理解しているかはわからない。

書類を読み始めたと思ったら、空欄を埋めたくなって関係ない数字を書き込んだりする。

説明した直後に予定も忘れる。

でも自分でカレンダーに書いた文字は読み返して納得していた。

最後は、

「確認しろよ」

と渡された書類にサインがなくて、ため息が出たけれど、もう一度お願いして書いてもらえた。

そして申請書を投函できた。

介護認定。

認定調査。

福祉用具のレンタル。

在宅医療。

知らない言葉ばかりだった。

でもこの1カ月で、驚くほど前に進んだ。

在宅医療の契約も終わった。

初診日も決まった。

今後は先生が定期的に往診してくださり、困った時には相談できる体制ができた。

そして、自宅で最期を迎えたとしても事故死扱いにならないことも知った。

介護ベッドも驚きだった。

私は勝手に高額なものだと思い込んでいた。

ところが実際にレンタルした電動ベッドは、介護認定がなくても借りられるタイプで、月額1,750円ほどだった。しかも新品のようにきれいだった。

もちろん機種によって違うだろうし、介護保険を利用する場合はまた別だと思う。

それでも、

「えっ、そんな金額で借りられるの?」

と正直驚いた。

介護はお金がかかるイメージばかり持っていたけれど、知らないだけで利用できるサービスもたくさんあるのだと実感した。

そして何より角度が少しつくだけで、呼吸が楽だとわかり、導入まで早急に出来てよかったと感じている。

6月は本当に質問ばかりしていた。

そして幸運なことに、関わる方々がみんな仕事のできる人たちだった。

介護ベッド搬入の日もそうだった。

私は担当の方に聞いた。

「今後、他に何があると便利ですか?」

すると、

・部屋の段差を解消するもの

・トイレの手すり

・室内の手すり

などを具体的に教えてくださった。

ここが危ない。

ここに付けるといい。

本で読んでいた知識が、初めて現実の部屋と結びついた。

聞けば教えてくれる。

でも聞かなければ入ってこない情報ばかりだった。

福祉課の方とのやり取りもそうだった。

父と母の介護認定について相談していたら、

「ご夫婦一緒に認定調査しましょうね」

と提案してくださった。

先週のうちに父の病院へ連絡し、状況を確認しておいたことも役立った。

あの時電話しておいて本当に良かった。

振り返ると、助けてもらえた場面の多くは、自分から質問した時だった。

仕事柄なのか、私は質問するのが得意らしい。

以前言われてたことはあったけど、今回の介護手配を通して改めてそう思った。

質問すると、道が見えてくる。

介護はわからないことだらけだ。

でも聞けば教えてくれる人がたくさんいる。

それが思っていた以上に大事だった。

この1カ月、日本に滞在するスケジュールにしていて本当に良かった。

次のツアー準備のためだったけれど、結果的には介護対応だけで毎日新しいことが降ってきた。

知らない言葉。

知らない制度。

初めての手続き。

仕事もあって、頭がパンクしそうだった。

保育園に子どもを預け始めた頃のような、あの慌ただしさに似ている。

ただ違うのは、大人は文句も言うし、こちらの都合では動いてくれないことだ。

そして私は先月末、一度爆発した。

何もしないのに口だけ出す人が大変だとは聞いていた。

本当にその通りだった。

もちろん配慮はしたい。

でも私もギリギリで回している。

3日後には海外へ出発する。

だから最終決定権のないまま進めることをやめた。

自分ができることを淡々とやる。

そう決めたら少し楽になった。

そして最近、もうひとつ気づいたことがある。

私にとって「共有すること」は呼吸みたいなものらしい。

だからこれを書いた。

この1カ月を振り返ると、私は質問することで道を見つけてきた。

知らない世界に入ったとき、私は質問することで道を見つけるらしい。

そして、見つけた道を誰かと共有したくなるらしい。

病院にいても、実家にいても、自宅にいても。

私は結局、観察し続けている。

そんなことに気づいた6月だった。

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橋場みき子

生きものに出会うために自然の旅に出かけてその環境の動植物を観察してメンバーと気づきを共有し楽しむのがライフワークです。自然の旅はリクエストに応じてご案内もしますし、自分が行きたい場所、出会いたい生き物の情報がが入ってくれば、声をかけて二人でも、いなければ一人でも出かけます。今年は新しい情報、人との出会いが多く違う世界が見えてきました。同じような感性の方と出会いたい。そのためにはどうしたらいいのか?を最近よく考えています。

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