「吠える40度、怒り狂う50度、絶叫する60度
(Roaring Forties, Furious Fifties, Shrieking (Screaming) Sixties)」
という海のひどく荒れる様子の違いを表現しているのは知っていたけど、
なんで、そんなに南緯40度〜70度にかけての海が荒れるのかは全く知らなかったし、興味がありませんでした。
船に弱い自分は、南極に行きたいと考えたことは無く、誘われた時に相当悩み、
で、結局行く決心を2年以上前にしたけども、船酔いが心配で心配で、悩みすぎて、決心した自分を悔やんだこともある。
でも、この海域の荒れ具合が、南極エリアの豊富な生きものを育むために必要な要素だとわかったら、
それなら仕方ないと納得でき、受け入れられたのでした。
なぜこの海域が荒れるのかは、まずざっくり伝えると、風と海流と地形がその理由。
ドレーク海峡のエリアには、西から東に吹き続ける強い風、偏西風が常に吹いている。
その結果、南極大陸を中心に時計回りに常に強い海流(南極周極流)がぐるぐると流れる。
激しく波たち、その結果、酸素が海にたくさん送り込まれる。
また、地形的に地球儀で見るとわかりやすいのですが、
南緯55〜60度あたりは地形的にさえぎる島もないので、ぐるっと一周できるところで、
特に、南米大陸と南極半島の先の細いところ、ドレーク海峡のエリアは、
狭くなっているので、ビル風のようにスピードが増す。
それらの要素で、風も強いし、海流も流れが速く激しい。
また「南極収束線」という南極大陸からの冷たい水と、北側からの温かい水がぶつかり合うエリア、
南緯50度〜60度ぐらいの場所が、温度差により、他の場所よりも海中でプランクトンがわいている。
そのエリアに、海流(南極周極流)も偏西風も止まらないので、
常に栄養が供給され続け、その海域が豊富な海となるわけです。
荒れた海は、大量の空気を海に取り込み、植物プランクトンを育み、
海水に酸素が多い溶存酸素が多くなり、その結果、動物プランクトンがより育ち、
それを餌にするナンキョクオキアミ(エビに形が似た5センチぐらいの生き物)が大量に育ち、
そのナンキョクオキアミを食べ、たくさんの生きものが南極周辺で生きているという循環。
これがわかったら、船が相当揺れてもそれは仕方ないよねと、すごくスッキリしたのでした。
ドレーク海峡が大変荒れる海域がゆえに、生きものが豊かに育まれているというわけだから、
生きものに出会いたいのならば、その波を受けることも大事なことだと感じたのでした。
南極に豊富な生きもの? と言われてもピンとこないかもしれませんが、
具体的には、クジラの仲間が24種類、アザラシやオットセイの仲間が8種類、
ペンギンやアホウドリなどの海鳥ほか約80種(ebirdチェックリストより)などが生息しています。
種数は少ないと感じる方もいるかもしれませんが、
高緯度地方に行けば行くほど、種数は減り、数が増えます。
例えば、キングペンギンが一面見渡す限りいるという景色を写真や映像で見たことあるかもしれませんが、
ある島の平原に5万ペア(つがい)いるというのを本で読みました。
南極エリアの生きものはスケールが大きすぎて、その数の多さを感覚的にまだ理解できない自分です。