はじめに
所属している爬虫両生類情報交換会2021年度の大会で、西表のカエル8種について話しをするにあたり、
今年撮影した写真を見直し、図鑑を複数読んだりし原稿を書いたので、ブログにも書き残すことに。
フィールドで見てきたカエルの写真とともに、私の観察時の感想も書きました。
2020年から爬虫両生類を集中して観察を始め、翌年、主体的に観察するようになって、飛躍的にいろいろなことが見えるようになってきて、
そうしたら、鳥や植物、ほかいろいろを改めて観察したくなってきて、私は生きものを求めて、それだけを考え出かけて行き、
探して、出会って、どんどん元気になった。生きもの、自然にはパワーがある、と信じています。
このブログの写真の中の生きものが、誰かの元気のタネになれたら幸いです。7回の夜間観察と昼間に撮影した写真です。
最近すっかり夜が観察のメインになりましたが、朝方に寝ても、夜明けから、鳥を探しに出かけています。
そうすると、思いがけずカメやヘビにも朝から出会えたりで、やっぱりフィールドに出てる時間が長いのは大事なんだと気づいたり、
自然豊かな場所にいると、時間が足りなくて、そして体力も足りなくて困るので、体は引き続き鍛えようという気に。
アイキャッチのカエルの絵の種が気になる方へ先にお伝えすると、時計の6時の位置の種がヤエヤマヒメアマガエル、
そこから反時計回りに、ヤエヤマハラブチガエル、サキシマヌマガエル、ヤエヤマカジカガエル、アイフィンガーガエル、ヤエヤマアオガエル、コガタハナサキガエル、オオハナサキガエルです。
この絵は、私の作画ではありません。
旅の同行者で、私の愛爬レンの関係者で、こんなのを描いて欲しいとお願いし出来上がった絵です。気に入ってます、感謝!
では、西表島のカエルの話スタートです。
8種のカエル
沖縄県の西表島には、8種類のカエルが生息。分布から8種をくらべると、
石垣島・西表島にしかいない固有種が3種。コガタハナサキガエル、オオハナサキガエル、ヤエヤマアオガエル。
石垣島・西表島・台湾に分布する3種。ヤエヤマハラブチガエル、アイフィンガーガエル、リュウキュウカジカガエル。
先島諸島(宮古列島、八重山諸島)に、他の種に比べ広く分布する2種。サキシマヌマガエル、ヤエヤマヒメアマガエル。
日本のカエルは50種
生きものの分類は、DNA解析がすすみ、近年、別種とされ、種数が増えていく傾向だが、カエルの世界も例外ではなく、2021年現在、
日本のカエルは50種に。
分類の変化
2000年以降に新種記載等で名前が変わったのは、以下の4種。
1.ヤエヤマヒメアマガエル、
2.ヤエヤマカジカガエル、
3.ヤエヤマハラブチガエル、
4.サキシマヌマガエル。
1と2は、2020年に新種記載されているから、本当につい最近の話し。
ちなみに、この先は、ややこしいので、面倒な人は読み飛ばしてください。正直なところ、どうでもいいと思う自分もいるけども、
せっかく今回、文献を読んだり、図鑑をチェックしたりしたので、自分のために書き残しておくと、
1.2020年、ヒメアマガエルと同種とされていたものが、ヤエヤマヒメアマガエルとして新種記載された。
2.2020年、リュウキュウカジカガエルと同種とされていたものが、ヤエヤマカジカガエルとして新種記載された。
3.2007年、基準標本の産地の間違いが判明し、ヤエヤマハラブチガエルに新しい学名がつけられた。
4.2007年、ヌマガエルと同種とされていたものが、サキシマヌマガエルとして新種記載された。
というわけで、もし自分でカエルの名前を調べたりしようと思ったら、2020年より前に発行の図鑑を使う際は注意が必要。
次は、個別にカエル8種を紹介。
繁殖期を最初に書いたのは、繁殖期はそのカエルが活発に動くので最も観察しやすい時期とされるから。
ちなみに鳴いているカエルは全部オスで、メスをよんでいる。だから、繁殖期なら声を頼りに探すこともできるというわけ。
1. ヤエヤマヒメアマガエル
繁殖期3〜8月、小さい頭、小さい口、カエルっぽくない形だけど、見慣れるとわかりやすいカエル。夏に3番目によく見た種。
夏にポットホール(川底や河岸の岩石上にできる円形の穴)をのぞくと、半透明の特徴的なオタマジャクシがたくさんいた。
ベレー帽をかぶったようなオタマに見えてきた。
成体で、葉の上にいたものは、初めてそんな場所にいるのを見かけたが、アリを食べるというから、あまり地上から離れないのだろう。
アンバランスな体型が、だんだん愛おしくなり、模様もちょっと不思議な感じなのがいい。
2. ヤエヤマカジカガエル
繁殖期4〜10月、背中にXのマーク、指先にはっきりした吸盤があり、図鑑にあるように海岸近くから山地にかけての広い分布域で見かけた。
オスは夜間に体色が黄色味を帯びるというだけあって、本当に黄色いが、昼間に見た茶色い個体は、メスなのか、オスだけど昼だから茶色いのか、その色味の違いが夜に見慣れたものと違いすぎて、別のカエルの印象を受けた。
夜に見るときは、細身のシュッとした感じの可愛いカエル。
3.サキシマヌマガエル
繁殖期3〜8月、背中に一本線が入っているもの、無いものと2パタンあるが、夏はとにかくこの種をよくみた。
小さいのから大きいのまで、色味のバリエーションも多く、本当にたくさん見かけました。
お腹の両脇にうっすら見える「ヌマガエル線」が特徴と書籍で知り、捕まえて観察したら確認できたのはこの種。
ヌマガエルより、サキシマヌマガエルの方が、体が大きく、背中のラインが太いのが特徴というが、その差異が実感できるほど、ヌマガエルを観察できていない。
今回、写真を選択していて、ヌマガエルが一番多くなったが、それはたくさん見ただけではなく、私がヌマガエル派なんだと初認識。
カエルの好みが、ヌマガエル派とツチガエル派の二大派閥にわかれると書籍にあった。ぽってりしているところが好みで、可愛いと感じる。
4.ヤエヤマハラブチガエル
繁殖期7〜11月、夏に独特の鳴き声を散々聞かされたけど姿は見れずで、秋に再訪して観察できて嬉しかった種。
鶏が鳴くような、コッ、コッ、コッ、コッか、
徳利からお酒を注ぐような、トク、トク、トク、トクという、一度聞いたら忘れられないような鳴き声。
山地の森林内の沼地、ぬかるんだ場所から鳴き声がよく聞こえてきたが、どこも入っていけるような場所ではなく夏はまったく近寄れなかったし、
秋に案内してもらった生息地も、これハマって抜けなくなるマズイ場所だと本能的に感じる場所で、8種のカエルうちで、最も観察の困難を極めた種。
写真にある、産卵のための土に掘った穴は、複数個確認したが、卵まであるのは確認できず。
足場の苦労も相まってか、茶色いカエルだけど、独特な四角い感じのフォルムで、ころっとしている感じが愛おしかった。
最終日に、田んぼのそばの道に珍しく出てきてくれて、嬉しい再会がすぐにでき、自分で見つけられたのもあって思い出深い。
5.コガタハナサキガエル
繁殖期1〜3月、山地の渓流周辺に見られる種で、ヤエヤマハラブチガエルの生息地とはまったく違った意味で、足場が悪い山道と川を渡ったりして、ようやく出会えた種。
丁寧に安全に道案内をしていただいたのですが、それでも、無事に帰ってこれるのか往路で心配になったほどの渓流沿いの道を進み、
途中、滑る岩を避けながらも岩を頼りに川を渡ったりして、夜だし怪我できないしと、かなりスリリングな思いをしながら生息地にたどり着き、コガタハナサキガエルに対面しました。
日本で一番見るのが難しい種と図鑑によく書いてありますが、生息地の好みがかなり激しい種で、
逆にその要素を満たせばピンポイントに集まってくるとガイドの方に教わり納得。目的地の場所の個体数は多く、よく見れました。
背中のボツボツが1番の特徴で、かっこいいカエルの印象。
メスは色味がオスと違ってヒョウ柄っぽいとおそわる。見ていた個体は、虹彩が金色で、異風を放っているように見えました。
渓流周辺だけど、水がバチャバチャしているところではないところがお好きなカエル。
生息地、その環境を訪れることが、こんなにもたくさんの情報を得られるのか! と、今回改めて思いました。
6.オオハナサキガエル
繁殖期10〜4月、コガタハナサキガエルを見にいく途中に、早々に出現。出てきてくれてありがたかった。
コガタハナサキガエルより、名前の通り、ずっと大ぶりなカエル。ボリューム感があり、カエルらしいカエルという気がした。
集団で産卵する様子は圧巻だと聞き、ダメ元でも、来年行ってみたいと考えている。ただ、その場所にたどり着くのは今回よりも大変だと聞いて怯んでいる。
7.ヤエヤマアオガエル
繁殖期12月〜4月、昼間から鳴いているのはわかっても、実際に見えたのは夜だけでした。これも秋10月に観察。
パパイヤの樹などに止まって、見た目が気怠そうに、たたずんでいるように見えた種。皮膚が緑色の色味のせいか、他のカエルと違って厚めに感じた。
西表島で唯一の緑色のカエル。
8.アイフィンガーガエル
繁殖期、一年中。と書いてあったが、本当なんだろうか? コガタハナサキガエルを見に行く途中の渓流沿いの山地で出会う。
日本で唯一子育てするカエルと言われているが、そんな気配を感じられるようなシーンを今回は見ることは叶わなかった。
白っぽくて、フォルムが平べったい印象を受けた。木の上や、葉の上にくっついていた。
ピッ、ピッ、ピッという鳴き声で近くにいるのに気付ける種。音の手がかりはとっても大事。もっともっとたくさん見たいと思った種。
脱線1 分類アレルギー
前職の仕事中、世界の鳥を見る機会には恵まれたが、世界の鳥の分類を追いかける気力はまったく起きず、
植物や鳥、そして哺乳類、全ての生物、恐竜などの古代生物まで、分類が変わって、名前が変わることで発生するトラブルや面倒さに嫌気がさしていました。
なので、鳥の関係者が、毎年年末にその年に変わった分類に合わせ、自分が今まで観察した鳥の種数を数え直すことを嬉々としてやっているのをある時知ってからも、
「何種見てるの?」という質問をしてくる人に「分類を追うのは大変だから数えてない。」といっても「どうして?」と聞かれたりして困惑。
当時は、時間がなさ過ぎて、それに時間をかけることが、まったく楽しそうと思えなかったからですが、時間ができた今でも、やるには気合が必要で、
いまだだに着手していませんが、eBirdにバードガイドが親切にシェアしてくれた記録が1,200種位あるので、ここに足して行けばいいのだよなぁ、やってみようかなぁという気が最近は少し芽生えました。
それは、なぜかというと、爬虫類・両生類の種数を数えるのが、楽しかったからです。
2020年、2021年と観察してきた爬虫類、両生類の種数を年末に一緒に観察に行く友人と数えて書き出したらとっても楽しく、分類へのアレルギーが薄れましt。
全体の種数が多くないというのと、あやふやな記憶を一緒に思い出す助けてくれる人がいるというのが、私にとっては大事なのだと今回気づきました。
世界のカエルだと種数が、2016年に発行の書籍に6500種以上とあったので、今なら7,000種は超えているくらいでしょうが、
日本のカエル50種なら、これから増えたとしても、なんとかなりそうと思える種数なのがとてもいいところです。
脱線2 正確な名前を確認する必要性とは
2007年、2011年、2020年に新たに別種になり新種記載されたり、新しい名前が付いているものがあるので、古い図鑑をみていると、名前が違っている。
生きものの名前は、変更も多いし、ものによっては似たようなものも多いので、そんなに細かく調べなくてもいいとも思う。
でも、名前がわかると、観察したものの違いが把握でき、バックグランドを楽しむことができるので、図鑑を読んでいて楽しい。
自分が確認したいと思ったら調べればいいし、細かいことはどうでもいいやと思えばいちいち名前にこだわる必要もないとも思う。
なげやりに聞こえるかもしれないけど、好きにすればいいと思う。名前を知ってる知らないは、自然を、生きものを楽しむハードルになったらつまらないから。
ただ、人と話したりするときに、正確な名前がわかると話が通じやすいので、人と情報を共有したりするなら名前がわかった方がおすすめ。
すごく詳しい人だと、分類が途中で変わったことや名前が変わったことなど、わかった上で説明しつつ探りを入れながら話してくれる時もあるが、知らなくて自分が話についていけなくなることもある。
また、どの程度分かっている人なのか? を判断するのに役立つ時もある。
今年出版された新しい書籍でも、両生類に詳しくない方が書いた全般的なガイドブックだと既にだいぶ前に変更されている名前がそのままだったりして、
全般的なガイドブックは全体把握には使いやすい反面、使用時には注意が必要(具体的にいうと、鵜呑みにしてはいけない)と今回この作業をしていて気づく。
脱線3 図鑑内の種数の間違いは困る
最近、最も愛読している、書籍のカエルの種数が間違っている。
54種とカバーに書いてあるのが間違えているだけならまだいいけど、
生態図鑑のページの説明、
“北海道から沖縄県まで、日本で見られるカエル54種を紹介する生態図鑑です。”と書いてあり、
自分は、その図鑑のカエルの写真の枚数まで数えてしまった。が、結局合わないので、詳しい人に確認したら、
2021年現在、爬虫両生類学会の最新データで、
日本のカエルは、亜種を含めて在来46種+外来4種、合計50種と確認できたので、
一見落着したのですが、この本を読む方は注意してくださいね。
その点以外は、フィールド撮影の写真がものすごく素敵で、こんな場面に出会いたい! と思う写真がたくさんあるし、
オタマジャクシの写真と説明が多数あるし、迷いやすい種をまとめて説明してくれていてわかりやすいし、
フィールド観察者にとっても、読み物としてだけでも、イチオシのカエルおすすめ本です。
使用している図鑑
ほかにもありますが、最近はこれらをよくみてます。
図鑑は書店で、自分のその時知りたいことが載っているものを選んだり、手にとって好き!と感じたものを買っています。
カエルの鳴き声の音声が欲しくて選んだ図鑑もあります。

最後に
西表のカエルを観察するなら、夏より10月以降がいいですよと教わり、秋に再訪して詳しい方に案内していただき全種を見ることができました。
全種を見たということより、その特殊な生息地に行けたことが、感慨深かったというか、大きな学びとなりました。
その環境だからこそのカエルなんだと感じて、そして実際に出会えて幸せな時間でした。
西表で渓流沿いを歩くことは、今までに経験はありますが、夜間観察時にしたのは初めてで、個人的には飯豊山の岩場の登山のように久々に怖かった時も。
滑らない長靴と新しい照明器具を、現地のガイドさんに教わったことも大収穫でした。
夜間観察時のヘッドランプと、手持ちのライトの2点も本当に大切なので、この冬の間に、再検討したいです。