撮るためじゃなく、見るために — ナチュラリストとしての撮影の話

ピントが合わない

だいぶ昔のタンザニアで、小鳥を撮っていたときのこと。

アカシアのトゲの多い木に止まっている、かわいい小鳥。

距離もよく、光もいい感じだったので、カメラを向けた。

でも――

撮れない。

何枚撮っても、ピントが来ない。

その理由は、アカシアの、あの細くて鋭いトゲ。

トゲにピントが取られていた。

どれだけ構えても、どれだけ半押ししても、

カメラは鳥ではなく、トゲにピントを合わせてしまう。

最初は、本当に意味がわからなかった。

「なんで?」

「カメラ壊れた?」

同じことを何度も繰り返して、

ただ、うまくいかない時間だけが過ぎていった。

あとから分かったのは、とてもシンプルなことだった。

カメラは、一番近くて、はっきりしたものにピントを合わせる。

つまり、カメラはずっと正しかった。

ただ、

私が見ているものと、違っていただけだった。

飛んでいるのに、撮れなかった

最初に「飛ぶ鳥を撮りたい」と思ったのは、南極だった。

そのあと、海鳥に興味が出て八丈島航路などで船に乗りながら観察していたら、

もっとちゃんと撮りたいと思うようになった。

それでトライしたが、うまく撮れなかった。

決定的だったのは、ニュージーランド。

すぐ目の前に、たくさん鳥が来てくれた。

距離も完璧だった。

それなのに、満足に撮れなかった。

こんなに近くに来てくれているのに、撮れない。

申し訳ない気持ちになった。

「近くを飛んでいるのに、私は撮れない」

そう思った。

それで、撮り方を知りたいと思った。

去年の3月にそう思って、

6月に飛ぶ鳥の撮影講習を受けた。

設定を教えてもらって、

その通りにやってみた。

そしたら、撮れた。

あっさりと。

そのとき思った。

難しいことは、全部自分でやらなくていい。

わかる人に、どんどん教わりにいこう。

見るためのカメラ

もともと、私は写真を撮る人ではなかった。

植物のツアーを任されたとき、

植物がまったくわからなかった。

オオイヌノフグリも知らなかったし、

黄色のスミレから見るような状況で、

紫色のスミレは、後から観察して認識した。

そのくらい、植物にふれてこなかった。

それで、記録と名前を覚えるためにコンパクトカメラで撮り始めた。

それで十分だと思っていた。

でも、関係者から一年ほど強く一眼カメラをすすめられて、

仕方なく使ってみた。

そしたら、すぐに変わった。

ピントが合う。

簡単に撮れる。

なんだこれ、と思った。

もっと早く手にすればよかった。

苦手分野でも、やってみないとわからないと知った。

しつこく薦めてくれた人に、とても感謝している。

それから、鳥も撮りたくなった。

望遠レンズで撮ると、

後から識別ができるようになった。

見えなかったものが、見えるようになった。

そこで、私の鳥の世界が大きく変わった。

でも、私はカメラにこだわりがあるわけではない。

フルサイズの重い機材も試したことはあるが、やめた。

肉体的に無理のないものを使うようになった。

ただ一つだけ、はっきりしている。

私は、

うまく撮るために撮っているわけではない。

観察するために、撮っている。

それだけだと思っている。

そして

あの飛ぶ鳥の講習会で、

ある人と出会った。

その場で、ハシビロコウの話になった。

「いつか行きたいですね」と話して、

連絡を取り合って、

本当に一緒に行くことになった。

去年の3月に「撮れない」をどうにかしたいと思って、6月に講習を受けて、

その場所で出会った人と、

今年の2月に同じ場所に立っていた。

すごいことだと思った。

撮ることが、

人をつなげる。

私はカメラが好きじゃない。

誰かが撮影したものを提供してくださるなら、撮らなくていいと思っている。

けれど、そうもいかないので撮り続けているし、

自分が撮りたいシーンもある。

記録が残ることで、後から気づけることもある。

そして、撮っていると奇跡みたいなことが起きるから、

撮っているのかもしれない。

撮るためじゃなく、

見るために。

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橋場みき子

生きものに出会うために自然の旅に出かけてその環境の動植物を観察してメンバーと気づきを共有し楽しむのがライフワークです。自然の旅はリクエストに応じてご案内もしますし、自分が行きたい場所、出会いたい生き物の情報がが入ってくれば、声をかけて二人でも、いなければ一人でも出かけます。今年は新しい情報、人との出会いが多く違う世界が見えてきました。同じような感性の方と出会いたい。そのためにはどうしたらいいのか?を最近よく考えています。

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