アフリカにエボシドリ(Turaco トゥラコ)という鳥の仲間がいます。緑の体に鮮やかな赤い翼を持つ、とても美しい鳥です。
この赤い色、実は「銅」でできています。
銅は人間でもエネルギー産生や抗酸化酵素に使われる必須ミネラルですが、過剰になると毒にもなります。
ミネラルは「量」だけでなく「状態」が重要で、キレートされているかどうかで安全性が変わると言われますが、エボシドリはそれを体現している生き物の様です。
この鳥は体内で銅を色素分子の中に閉じ込め、その色素を羽に沈着させています。
羽は代謝的には死んだ組織(ケラチン)なので、体内から安全に金属を隔離する場所として機能します。
つまりエボシドリは、
銅をキレートして羽に排出している鳥
とも言えます。
人間は毛髪に重金属を出し、
エボシドリは羽に銅を出すということですね。
体に不要な金属を「体の外側に固定する」という戦略は、生き物に共通する解毒の仕組みの一つでしょう。
そしてとても興味深いことに、現在知られている鳥の中で、銅を含む色素を羽の色として使っているのはエボシドリだけです。

さらに緑色も特殊です。
エボシドリの緑はトゥラコベルディン(turacoverdin) という色素によるもので、
名前にも「トゥラコ」が入っています。
多くの鳥の緑は黄色色素と構造色の組み合わせですが、エボシドリは緑色素そのものを持っています。
赤のトゥラシンは銅を含みますが、
緑のトゥラコベルディンは金属を含まない色素で、いずれもエボシドリの特徴的な代謝から生まれたものと考えられています。
ミネラル代謝は単独ではなくネットワークで動きます。人間でも亜鉛を多く摂ると銅の吸収が下がるように、金属はバランスの中で調整されています。
エボシドリは銅を扱う能力が特別に発達した生き物とも考えられ、自然界のミネラル代謝の多様性を感じさせてくれます。
ミネラルは毒か栄養かという二択ではなく、どの形で存在しているかが重要だと言われますが、エボシドリはそれを自然界で示している存在なのかもしれません。
しかもそれが、美しい赤と緑の色として現れている。
森の中で実際にこの鳥を見ると、とても鮮やかなのに、不思議と周囲に溶け込んで見える瞬間があります。その赤と緑色は、目立つのに目立たない、そんな色です。
光沢のないマットな質感の赤と、深い緑。
さまざまな鳥に世界で出会っていますが、色鮮やかな鳥の色は独特の意味を持つことも多く、自然の中で機能する色には、不思議さと美しさの両方を感じます。
久しぶりにエボシドリの仲間にウガンダで再会したくさん観察でき、色素の話しもガイドから再度聞いたので帰国して改めて調べていたら、分子栄養学につながり面白く感じたので、エボシドリの色素の話は、固有名詞をすぐに忘れてしまうので書き留めました。


