この旅で得た極感の中での自然観察をする方法、防寒対策の運用はきっと未来の私を守るからまとめたい。
マイナス30℃の世界、壊れる道具、鈍る判断力、それでも自然は美しい
モンゴルの冬は寒いというより痛く「世界が壊れやすくなる場所」だった。
私が今まで経験してきた寒さのレベルとは別世界だった。最高でもマイナス25℃位と聞いていたが、大寒波のせいで到着直後にマイナス32℃と言われ、大丈夫か私? でもなるようにしかならない、と車内側が一面に凍った窓ガラスを触りながら、ぼんやり到着直後に考えた。
マイナス30℃を越える環境では、寒いだけじゃない。体も道具も、判断力も、全部が壊れやすくなった。
今回一番強烈に学んだのは、凍傷は“あっという間”に起こるということ。
登山家だけの話かと思っていたけど、マイナス30℃を超えると世界が変わった。体感温度はマイナス40℃近くまでいってたのだから、後から考えたらそりゃそうなんだけど、頭にないことは気づきにくい。
マヌルネコを観察中、薄い手袋でいた時間があって、気づいた時にはもう指がジンジンしてちぎれそうに痛くなった。後から知ったが大失敗だった。
興奮してたのもあったが、指がそんなことになってると気づいてなかった。モンゴル到着してまだ12時間ぐらいのことで、環境を理解してなかった。
極寒では“異変に気づける自分”を維持すること自体が難しいし、おかしいと気づいてもすぐに動けないこともあった。
それと同時に、極寒ではいろんなものが壊れた。
三脚の雲台の中心部が折れ、スコップが欠け、ランドクルーザーの車のエンジン、ドア。軽微だがパタゴニア社のダウンのロゴが剥がれた。コンタクトレンズも置いた場所が悪かったがゲル内だったけど、凍って変形した。
寒さは、人間だけじゃなく物理的な世界全体を固くして、脆くする。

そして、厚着をしているほど、気が回らなくなる。

レイヤーが増えるほど動きが鈍くなるし、荷物の出し入れも遅くなる。そして落としもした。
だから私は今回、「寒い国では持ち物は最低限が最強」という結論に着いた。そして、登山の世界では重ね着だけど、自然観察の場合は違うなと確信した。
荷物は少ないのがベストだが、寒い国は特にだ。寒いと頭が働かない、荷物の管理はできない。身につけられる物に限る。暑いところより、私はそう感じた。
初めての場所は心配で荷物は増えがちだが、削ぎ落として迷わない仕組みを極寒の環境こそ作る必要がある。
寒さの中で助けになったのは、甘いものだった。
普段は積極的に食べないが、チョコやきなこ棒、チョコピーナッツなどを少し寒い、冷えたと感じたら、すぐ食べて糖を入れ、脳内のエネルギーが切れないようにした。食べると回復のスイッチが入った感覚があった。
極寒は、根性よりやり方。
私は今回、寒さに準備と手順で超えられただけ。毎晩、明日はどうしようかと考えた。だから、行きたかったら、考えたら、誰でも出来ると思う。詳細の持ち物リストは、また今度公開する。今回、より寒い世界で観察することを体験して、経験値は爆上がりした。そして、その手順は、次のどこかの自分の旅にも必ず役に立つ。南極に行った後の冬のモンゴルで本当に良かったと感じている。
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極寒は根性じゃなく、手順で越える世界。
今回のモンゴルの旅は、マヌルネコやユキヒョウ、多くの鳥との出会いひとつひとつが奇跡のようで毎日素晴らしかった。それから、私にとって「極寒で何を感じ、何を得て、どう未来につなげるか」をはっきりと残してくれた旅にもなりました。凍傷の怖さも、道具が壊れることも、寒さで余裕がなくなる感覚も、全部リアルだった。寒さの方が生死に関わると実感した。でもその先にあった出会いと景色は、それ以上に大きかった。南極で「想像を超える自然」に出会った時と同じように、モンゴルもまた私の旅を更新してくれました。きっと私はこれからも、簡単じゃない場所へ行くし、怖さがゼロになることはないだろうけど、手順で整えて、自然に合わせて、それでも会いに行くと思う。そんな旅を続けていくはず。この記録が、未来の自分へのメモになって、そして誰かの旅の準備の助けになったら嬉しい。

