ハシビロコウ 湿地を自由に飛ぶ翼と上昇気流の話

ハシビロコウは「動かない鳥」として知られている。

確かに湿地でじっと立っている姿は有名だし、私も最初はそう思っていた。

でも実際に飛ぶ姿を見たとき、その印象は大きく変わった。

大型の鳥なのに驚くほどゆっくりと空に浮かび、旋回し、そして静かに降りてくる。

まるで空気の上に乗っているようだった。

なぜあんな飛び方ができるのか。

観察していくうちに分かってきたのは、

ハシビロコウは「動かない鳥」なのではなく、

湿地という空間を自由に使いこなす鳥だったということだった。

■マントのような翼

ハシビロコウの翼はとても太い。

朝に雨が降った日、乾かしている姿を見ることができたが、私にはマントのように感じた。

この「太い翼」が重要な意味を持っている。

翼が太いほど空気をたくさんつかむことができるため、

・低速でも浮く

・失速しにくい

・ゆっくり飛べる

・ゆっくり降りられる

という特性が生まれる。

実際、着地するときのハシビロコウは驚くほどゆったりしている。

大型の鳥なのに、ふわっと空中に留まるように降りてくる。

それは翼の構造そのものが生み出している現象だった。

■足が後ろに長く伸びている

飛んでいるとき、脚が大きく後ろに伸びているのも印象的だった。

これは単に脚が長いからではなく、飛行のバランスを取るためのように感じた。

飛んでいる時、首も少し縮めていた。

巨大な頭と嘴を持つハシビロコウは前が重くなりやすいはずだ。

首を少し縮めて重心を翼に近づけ、脚を後ろに伸ばすことで前後のバランスを取っているようにも見えた。

そんな姿勢が、とても安定した飛行につながっているのかもしれない。

■上昇気流(サーマル)を使う鳥

ハシビロコウが旋回しながら高度を上げる姿も観察した。ぐるぐる回るので、しばらく観察することができた。そしてそこから抜けて、頭上を飛んで行った。

これは「上昇気流」を利用している飛び方だ。

鳥は羽ばたかなくても、温められた空気の柱に乗ることで上昇できる。

ハシビロコウだけではない。

アフリカで見てきた

・ペリカン

・ハゲワシ

・コウノトリ

もすべて同じ方法を使っていた。

ンゴロンゴロ・クレーター、セレンゲティの上空でも、大型の鳥たちがぐるぐる旋回しているのを過去に観察していたけれど、思い返せばそれらは全部上昇気流に乗っていたのだと思う。

翼が大きい鳥ほど、この上昇気流を利用しやすい。

だから大型鳥は、驚くほどエネルギーを使わずに移動できる。

■湿地でも上昇気流は生まれる

山の渓谷では、斜面が温められて強い上昇気流ができる。

一方で湿地の上昇気流は少し仕組みが違う。

湿地には

水面

草地

浮島

といった温まり方の違う場所が混ざっている。

その「温度のまだら」が、小さな上昇気流をたくさん作る。

山ほど強くはないけれど、大型鳥が飛ぶには十分だ。

ハシビロコウは、その空気の流れをちゃんと利用していた。

■動かないのではなく「動く必要がない」

ハシビロコウは長時間じっとしている。

でもそれは怠けているわけではない。

低速で飛べ、上昇気流を使ってエネルギー効率よく移動し、好きな場所に降りられる

そんな能力があるからこそ、「待つ」という戦略が成立している。

獲物が少なければ飛んで別の場所へ行けばいい。

彼らは

自由に動ける鳥だからこそ、動かない戦略で生きていると感じた。

■優雅に見える理由

飛行中のハシビロコウはとても優雅に見えた。

それは、

・翼が大きい

・翼荷重が低い

・低速でも揚力が出る

という物理的な理由によるものだった。

大型なのに余裕があるように見えるのは、空気の上にしっかり乗っているからだ。

ハシビロコウが優雅に見えるのは力が強いからではなく、空気の上に「余裕を持って乗れる設計」だからだった。

湿地に立つ姿も魅力だけれど、空を飛ぶ姿を見たとき、この鳥の本当の設計が見えた気がした。

ハシビロコウは、「動かない鳥」ではなく、湿地という空間を立体的に使いこなし、省エネルギーで生活する進化をとげた生きものだと感じた。

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【揚力】 → 空気が押し上げる力

【翼荷重】→ 翼がどれだけ余裕を持って体を支えているか

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■揚力(ようりょく)とは?

揚力とは、空気が翼を押し上げる力のことです。

飛行機も鳥も、この揚力によって空に浮いています。

翼が空気の中を進むと、

下向きに空気を押す

その反作用で上向きの力が生まれる

これが揚力です。

揚力が大きいほど、

・浮きやすい

・ゆっくり飛べる

・重い体でも飛べる

ということになります。

ハシビロコウの翼はとても大きく太いため、低い速度でも十分な揚力を作ることができます。

■翼荷重(よくかじゅう)とは?

翼荷重とは、体重を翼の面積で割った値です。

簡単に言うと、「翼が体重をどれくらい支えているか」を表す指標です。

イメージとしては、

・翼が大きい → 翼荷重が低い

・翼が小さい → 翼荷重が高い

翼荷重が低い鳥ほど、

・ゆっくり飛べる

・失速しにくい

・ふわっと浮ける

・旋回しやすい

という特徴があります。

ハシビロコウは翼が非常に大きいため、翼荷重が低い大型鳥です。

そのため、

大型なのにゆったり降りられる

旋回がとても上手

という飛び方が可能になります。

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橋場みき子

生きものに出会うために自然の旅に出かけてその環境の動植物を観察してメンバーと気づきを共有し楽しむのがライフワークです。自然の旅はリクエストに応じてご案内もしますし、自分が行きたい場所、出会いたい生き物の情報がが入ってくれば、声をかけて二人でも、いなければ一人でも出かけます。今年は新しい情報、人との出会いが多く違う世界が見えてきました。同じような感性の方と出会いたい。そのためにはどうしたらいいのか?を最近よく考えています。

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