パナマで観察した樹の花 バルサ(Ochroma pyramidale)と判明

今年1月にパナマを訪れ、

その時に観察した樹が、何の種かわかって

しかも、材(ざい)としてよく名をしられた「バルサ」だとわかり、

そこから、長旅になった話の顛末です。

現地で気になった樹木

ミドリインコという、

パナマで最もよく見るインコが、花の蜜を長いこと吸っていた。

双眼鏡で観察していても、

私達人間の視線には気づいてはいるが、

吸うことに忙しくて、こちらは気にしていなかった。

その姿はとても愛らしく、

よっぽど美味しいのね~と心の中で声をかけながら、

私は激写して楽しんでいた。

今回、写真を見返したら、

ミドリインコ(Orange-chinned Parakeet)のほか2種の鳥、

フナシマネシツグミ(Tropical Mockingbird)、

カンムリオオツリスドリ(Crested Orpendola)

も吸っていた。

ミドリインコ

フナシマネシツグミ

カンムリオオツリスドリ

どんな樹?

樹高30メートル位の樹木で、

かなり大きい花を複数つけていた。

がく片から花びらの先までの長さは、

少なく見積もっても20㎝以上はあり、

大きいものは30㎝弱になるかもしれない程度。

この樹、何の樹だろう?と気になった。

どこで見たのか?

ホテルの裏庭というか、

裏の森。

夕方、探鳥のため歩くとまだ蒸し暑いので、

ホテルのテラスのイスに座って、

のんびり探鳥していた時に花の蜜を吸う鳥に気づき、

花もいくつか咲き、

蕾が多数あるのに気づいた。

なぜ、樹木の名前がわかったのか?

ナショナルジオグラフィックの雑誌を整理中に見返していて、

特集されていたことに気づいた。

2011年5月号の96~109ページの「乾いた夜に咲く花」だ。

それで、

学名 Ochroma pyramidale オクラマ・ピラミデール、

バルサ、

と判明した!

バルサの名を知ったのはエクアドルだった

20代2度目の海外旅行で、

友人に誘われ、エクアドルのガラパゴスとアマゾンに行った。

その時、キトの町で、鳥の民芸品がたくさん売られているお店があって、

私は、欲しくてほしくてたまらなくなった。

でも持ち帰るには、どれもすごく大きくて、

相当悩んだが買わずに帰国した。

その時の鳥たちは、

大きいのにとても軽く

何の素材で作られているのか気になって聞いたら、

「バルサ」と言われた。

樹木は、材料としての名前で有名なことが多いとその後、

だいぶ経って仕事で植物を扱うようになって知る。

一般人にとって、樹木の名前より、

材としての名前のほうが、聞く機会が多いと思う。

例えば、

南洋材で有名なラワン材の「ラワン」も、

フタバガキのことだ。

バルサのことあれこれ

特集を読み返して、

そしてウィキペディアや、ほかにもいろいろ調べて以下のことを知った。

以下、備忘録として。

バルサは、アオイ目パンヤ科の広葉樹で、

メキシコ南部からボリビアの中南米にかけて分布する植物。

成長が驚くほど早く、

10~15年で樹高約30メートルほどに成長。

パイオニア植物(森の空き地や、放棄された牧草地などにいち早く進出)で、

寿命は30~40年ほど。

樹齢2年目から花をつけ、

大量の蜜を分泌、

その量たるやすごい。

1本の樹に毎晩50~60の花が咲き、

それぞれが30mlに近い蜜を出すので、ざっと一晩に1リットル以上も!

その蜜は、マッシュルーム風味の甘いシロップのような味と記事に記載あり(笑)

この表現、何となく想像がつく。

そして、研究者や愛好家は、間違いなく飲んで確かめるはずで、

毒だとわかっているのになめて確認していた植物学者を思い出した。

最も軽い材の部類、なんとコルクより軽い。

かつ、柔らかいのに、

重量に比べ強度が強いのが特徴。

アメリカでは、建築資材、映画セット、航空機などの分野で急速に普及。

カッターナイフで自由にカットしたり、

彫刻刀での加工もしやすく模型工作などにも人気。

そして、救命具、ルアー、浮き、遮音材などに幅広く活用。

バルサとは、スペイン語で「いかだ」の意味。

バルサが咲くのは、

ほかの多くの樹木が実を付けなくなる、

雨季(パナマの雨季は5月~11月)の終わり。

そのため貴重なカロリー源となり、

オマキザルやオリンゴ(アライグマの遠縁)、

オオヘラコウモリなどの哺乳類から、

鳥類、昆虫と実に様々な生き物が蜜を吸いに来る。

また、蜜を吸いに来るハチドリを狙って、

ヘビ(記事にはボアコンストリクターの写真)が待ち伏せし、

虫を狙って、ヤモリも花にやって来る。

でも、

夜に花を咲かせるバルサの本当のターゲットは、

キンカジューやオリンゴだろうと推測されている。

脱線その1 オリンギート

中南米で哺乳類を見るのは、

アフリカに比べると格段に難しく、

出会うチャンスも圧倒的に少ない。

なかなか名前と顔が一致しない。

オリンゴってどんな顔していたっけ?と

思って、ネットで調べていたら、

急に「オリンギート」を思い出す。

エクアドルのツアーを企画していた時に、

必ずみられるから、ツアーを作ってと言われたのだった。

2013年に35年ぶりに新種発見された肉食哺乳類。

オリンゴに似てるけど、もっと高所で生活しているタイプの動物。

ネットサーフィンしていたら、

ナショナルジオグラフィックの記事にまたあたり、

新種のオリンギートを2013年に見つけた人が、

2011年のこのバルサの記事の中に出てくる人だと気づく。

所属が変わっていたが、

道を究めている感を感じて、気づけたことがなんだか嬉しかった。

オリンゴ属は、近縁のキンカジュー属に形態や修正は似るが、

最も近縁なのは、ハナグマ属とのこと。

オリンゴ属とキンカジュー属の類似性は、平行進化の一例とのこと。

「平行進化」は初めて聞く。

平行進化とは、

“異なった種において、似通った方向の進化が見られる現象を指す。

平行進化の結果が収斂である場合もある”

とのこと。

元に戻り、

オリンゴ属の最も近縁なハナグマ属は、

南米で最も見やすい動物の一種。

で、かつ地上性。

近縁というのは、不思議な感じもするが、DNAがそう言っているのだろう。

オリンゴもキンカジューも樹上動物で、

野生で見るのは難しい。

この先、出会える気がしないけど、

動物園でばったり出会うことがあるので、

覚えておこうと思う。

脱線その2 植物分類 APG分類体系と大場秀章先生

バルサの説明に、

アオイ目、パンヤ科と見た時に、

気になってググった。

気になった理由は2つ。

➀私の知っている他の植物でなじみな植物は何だろう?

➁この分類体系は最新のやつ?

2つとも、ウィキペディアですぐ答えが出たが、その先の沼へ。


“ 世界の熱帯に分布し、30属180種ほどからなる。

日本には自生しない。

種子の繊維を利用するカポック(パンヤノキ)、

観葉植物のパキラ、

軽い材木がとれるバルサ、

「果物の王様」といわれるドリアン、

特異な樹形で有名なバオバブなどを含む ” と。

マダガスカルで、よく見るカポックやバオバブと同じ仲間なのね~と。

熱帯アジアのドリアンとも同じ仲間とは。

ちなみにバルサは、1属1種。

➁の分類体系の話しは、

会社員時代に植物ツアーを担当していた後半に知ることになり、

頭が痛くなって避けていたが、

何となく、今回は気になった。

それで、確認することにした。

分類の話しは、ややこしくて覚えられないがいい機会だから復習。

植物分類には、

それぞれ人の名前のついた

エングラー体系、

クロンキスト体系などが長年使われてきた。

これは、見た目で花の形態を調べてそこから分類された方法。

これに対し、近年、2000年以降

DNAの塩基配列の解析を元に、

植物の進化の流れに沿って分類したのがAPG分類体系というのが新しくでき、

採用されるようになった。

で、

➁の答えは、

パンヤ科(Bombacaceae)は、

APG分類体系では廃止されてアオイ科に含められた。

と判明。

APG分類の、

このスリーレターも覚えられず、長年調べもせず疑問だったのですが、

Angiosperm Phylogeny Groupの頭文字で、

被子植物 系統学 グループ

とグーグル翻訳で判明。

この新しい分類については、

大場秀章先生の『植物分類表』を当時買っては見たものの、

今日も植物分類体系の変遷を読み直したけども、

難しくて、あまたに入ってこなかった。

もとより、

細かいことを区別していくことが、

どうでもよくなるタイプで、

苦手です。

最後に

海外の植物は、

適切な植物図鑑を入手するのが難しく

図鑑がないと同定のしようもなく、

ある時から確認することをしなくなりましたが、

何かのきっかけで、わかると

ものすご~く楽しいことを再確認しました。

見た植物の名を全部調べることはとてもできないけど、

やっぱり、気になる植物ぐらいは調べようという気には今回なりました。

今日、大場先生の本を読み返していて、

“シダ植物、裸子植物、被子植物からなる高等植物(維管束植物)は、

世界には25万種あると推定される”

と記載がありました。

2009年11月の発行なので、

もっと増えているはずですが、

ざっくり鳥の25倍以上。

植物は果てしない、

底なし沼のように感じていましたが、

およその数を初めて認識し、すこしすっきりしたような、しないような。

久々に、植物の世界に浸りました。

大場先生には、在職中に一緒にお仕事させていただく機会があり、

大変お世話になりました。

先生の本は、自分には読み進めるのが難しいのですが、

お話しの時は、素人の自分にもとてもわかりやすくスタート。

段々、難解になるのですが、それは、自分の能力の問題が、、、。

笑顔も話される雰囲気も人柄も優しく、

とても素敵な方でした。

在職中に、お世話になった先生方には感謝しかありません。

バルサと共に、久しぶりに植物の世界を思い出し、楽しみました。

☆以下、激写したミドリインコの写真。

英名(Orange-chinned Parakeet)の通り、

オレンジの羽が、嘴の下に見える時があり、

そこがチャームポイント。

このインコ、ホテル敷地内の駐車場そばの樹で寝ていて、

朝飛んでいく。

このインコ、出現回数は多いけど、飛んでる時はよく見れないので、

蜜を吸っていてくれる間は、好きなだけ見れて幸せでした。

メッセージ

世界のフィールドを歩き生きてきた私は、移動して自分の知らない世界とつながり、自然や生きもののエネルギーでパワーチャージをしています。クリアな自然の中に身をおき、動植物を感じようとすることは、自分のコアな部分につながり、瞑想しているような落ち着いた時間を過ごすことができます。私とそんな時間を共有してみませんか。

この記事を書いた人

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橋場みき子

生きものと世界の大自然、旅や愛爬ヒョウモントカゲモドキ、ときどき娘のことなど書いています。動植物大好き、自然の旅案内人として、知人・友人に案内しています。2020年3月まで世界の動植物に会いに行く旅を手配・案内する生活をつづけて20年以上、1年に地球5周を移動するような生活でしたが激変。2021年9月私は生きものとのつなぎ人と自覚し復活。鎮まりながら多動し、今日も生きています。

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