流氷に囲まれ、反射して顔の青くなったヒゲペンギンに出会った日。
まだよくみたいアシナガウミツバメがラウンジの窓越しに多数飛び、尾羽の先が白いアオミズナギドリもチラチラ見え、いつも多いマダラフルマカモメとナンキョククジラドリの海鳥がかたまりでバンバン飛び、いてもたってもいられなくなり、
バイオセキュリティチェック前のわずかな時間に外に出ることにする。外に出るドアを開け静かにドアを閉めるだけでもひと苦労なくらい強風だけども、着込んでいるから冷たさは感じるけど寒くなく、海鳥の波乗りをする様を見つづける。
10羽以上が一緒に飛んでいるのは美しく、魅せられ自分も飛びたくなる。撮影して記録したい気持ちにもかられるが見続けてしまう。
防寒対策をしていても30分もすれば自分はかなり冷えてくる、でも帰りたくないそんな素敵な景色が波と共に途切れることなく目の前に続くのでした。
南極上陸前、極地の汚染を防ぐための最後のバイオセキュリティを済ませて、再びさっきよりも着込んで外へ行くと、
鳥の数が減っていて、涙。海鳥の飛ぶタイミングは全くよくわからない。ひっきりなしに飛んできているかと思えば、ぱたっといなくなる、それの繰り返し⁈ 密度濃いのをみてしまうと心奪われ、いない時がさみしく感じる。急にいなくなる、とても不思議。
でも、そのまま期待をもって鳥を待っていると流氷が見えてきた。かなり大きい、そうこうしていたら黒い島が白い雲と霞と共に見えてきて、興奮してくる。
それなのにランチのアナウンスが入り、食べている場合では無い気分だけど、朝から動いていたから珍しくお腹が空いていてパス出来ず、そのままレストランに直行し、流氷が見えるサイドに席を取り、ビュッフェのランチを急いで済ませて再び外へ。
その頃には、すっかり船の周囲は流氷に囲まれ、鳥屋でない一般の人も外に沢山出てきて、デッキはいつになく騒然としている。後からふりかえると、旅のハイライトの一つだった。
先に食べ終え、メンバーに出会えないまま、1人でデッキの階数を移動しながら、流氷にのるアデリーペンギンを探す。
船会社のバードガイドや鯨類ガイドのほか、アメリカ、オランダ、ドイツ人のバードガイドが複数いるし、鳥屋の様子を見ていればどこにいても情報は得られそうだが、ミンククジラ、セミクジラ、ザトウクジラが出たとクジラコールがたびたび上がり、緊張感がその都度はしる。
乗船後、初めての雰囲気で、多言語に包まれながらの観察は初めて。自分より大きいひとが多い珍しい空間にいながらの観察も初めてで面白い。
クジラはいずれも数回の噴気しか確認できず、船からすぐに離れたようで、一気にクジラが多種、出現したせいで私の気持ちはまったく落ち着かなくなり、メンバーを探して合流。
今回、天候不順でサウスオークニー諸島に上陸は出来ず、そのせいで今後は見るのが難しいであろうと情報があったアデリーペンギンを鳥屋は大きな流氷上や海上にみな探している。
流氷の茶色の部分に黒い点々、ゴマ粒が見つかり、後から知ったが船長がコースを変えそこに近づけてくれ、そのお陰でかろうじて撮影できる具合の距離となり、後からようやくアデリーペンギンとわかった。
その後、一般開放されたブリッジ(操縦室)に先に行ったメンバーに会い、案内してもらい訪れ、その場所の特別感に驚く。
ブリッジに近付いたときから匂ってきた香りが部屋中にし、すごくすごく静かで、前面がガラス張りで船のどこよりも外がよく見える。
鳥もクジラもこれなら見えるはずとわかるその視界の良さが格別、開放感がすごくてブリッジのその空間に一瞬で魅了され好きになる。
レーダーや、小さな舵、ロシア語を話しているキャプテン、副キャプテン、そしてゾデアッククルーズで外に出る時にだけ、いつも見かける人(ウィンクがうまい2m近いイケメン)がいることに気づき、その場も外とあわせて観察する。
窓の外には島の湾内に入り雪の積もる急峻な黒い山が見え、ひたすら静かな映像は映画のようで、不思議な感覚。何よりもひたすら静かだった。
電話が突然なり、目の前のローリー島の観測所から連絡が入った。スペイン語での交信は珍しいようで、船内スタッフ、操縦士ほかそこに複数いたエキスペディション担当スタッフに緊張感がはしった。
エクスペディションスタッフのPauloが交信した。詳しくは全くよくわからないが、感謝を述べていたのやお互いの気遣いは感じられて、船の交信をリアルに体験しとてもいい時間だった。単純な自分なのでしばらく船乗りに憧れそう。
夕方のリキャップで、Pauloが交信内容を話してくれたが、それには笑いが含まれていて、本当にそうだったのか⁈と思った。
Pauloは今日の午前中のバイオセキュリティチェックの際に、私のマックブーツをゴシゴシ洗ってくれ手渡してくれる時に「Ready to Antarctica?」と声をかけてくれたその人で、親指を立てるジェスチャーと共に「Yes! Every day is Amazing!」と私にしてはかなりノリ良く、いや実際にそうなのですんなり返せたのだけど、そうしたらすっごく人懐こそうな笑顔でニッコリ返してくれた人でした。
そんな陽気な人が緊張した面持ちでアルゼンチンのオルカダス観測所と交信するのを垣間み、その後エンターテナーの顔で面白おかしく話している2つの顔を同じ日に見たのが印象的。
また、期せずしてクルーズ船が流氷に包まれるのを同行メンバーがとても喜び、すっごく嬉しそうな顔も見れた。
一緒にペンギンをねばって探して青い青い氷山の中にいる、氷の反射で顔の青くなったヒゲペンギンも見て、
サウスオークニー諸島には上陸は出来なかったけど、とてもいい1日と感じたので乗船後初めてワインを夕食時にいただきました。
乗船13日目のことです。