アリクイとの出会い
パナマに行ったバードウォッチャーなら必ず行く、
もっとも有名な探鳥地に「パイプラインロード」がある。
そこで、遭遇したキタコアリクイ。
いつか会えたらいいなぁと思っていたアリクイの仲間。
アリクイの仲間は、3種類いて
オオアリクイ、コアリクイ、ヒメアリクイと、
大中小のサイズ。
コアリクイは、中型サイズのアリクイ。
出会いは突然やってきた。
落ち葉を踏みしめるカサカサという音が聞こえてきて、
地面を歩く哺乳類に気づき、
見えるところまで出てくるように
こちらが動くのをやめて待った。
その間、
緊張感がはしる。
何(の種類の動物)だろう?
という期待に胸があつくなる。
南米に行ったら割と普通種でよくみかける
シロバナハナグマ(White-nosed Coati)や
マダラアグーチ(Central American Agouti)
かなぁ?また、と思いつつ、
こればかりはチェックしないとはじまらないので
確認、確認と思っていたら、
「アリクイだ!」
の声が静かにあがった。
それと同時くらいに自分でも気づいた。
大きさが全然違うのと、
動き方もまるで違う。
おぉっ~と、
静かな雄たけびのような、ひと呼吸して、
緊張をほぐす。
もっと、もっと、森の中から出てきて姿を見せて!と祈るような気持ちで、
アリクイが動いてくれるのを待つ。
そして、アリクイが動くのと共に、
見えそうな位置に皆、急いで、静かに動く。
落ち葉を踏みしめる音は結構大きな音なので、
あっという間に、アリクイに気づかれる。
そして、あっという間に樹に登られてしまった。
アリクイの見た目と動き
俊敏に動きそうにない見た目とは違い、
動きが早かった。
後から確認した図鑑には
体重3.6~8.4㎏、
頭から尾の付け根までの体の長さは、53~88㎝と記載があり、
見た個体はおよそ70㎝はあったので、
すでに成体だと推測。
樹に登ったアリクイ
するすると、
身軽に樹の登ってしまったアリクイ。
私たちは、静かに待った。
動かず待った。
そうしたら、安全だと感じたアリクイは樹から降りてきて、
また森を歩きだした。
おぉ~、
降りてきてくれた~!!と
すでにとってもうれしい。
でも、
もっとちゃんと見たい。
そして願わくば、写真も撮りたいと思った。
アリクイとだるまさん転んだをする
アリクイは、私たちの存在に気づき、
森の奥へと向かって歩いて行った。
愚鈍そうにみえるけど、足取りは早い。
一瞬、悩んだ。
森に深く入ると危険。
ダニがいるかもしれないし、
足もとも怪しくなる。
でも、少しだけ行こうと決め
アリクイについていった。
そうしたら、
アリクイがときどき振り返る。
こちらを気にしながら、
アリクイが振り返る。
後脚で立ち上がり、
樹に登ろうかという状況で振り返る。
で、私は歩みを止める。
私がとまると、
アリクイも一瞬とまる。
「ん? 大丈夫か?」
というような、
間があって、
それからまた進む。
私も、歩みを進める。
すると、また振り返る。
それを数回繰り返し、
見通しが少しひらけていて、
つぎにふりかえってくれたら、顔が見えるかも?
と思う場所を待って、写真撮影をした。
枝もあり、ピンもあってないけど、
それでも
うれしい一枚になった。
なんとなく
「ん?」
という顔をしているような気がする。
アリクイとだるまさん転んだをした気持だった。
その間、
尾や
足裏や
ツメも見せてくれ、
アリクイとのファーストコンタクトは終わった。
どんどん、森の奥へすすむアリクイを見おくり、
ありがとう、とバイバイをして、
私は、アリクイに背を向けて急いで森の外に出た。
パイプラインロード
キタコアリクイと出会ったのは、
有名な探鳥地、
パイプラインロードを歩きはじめて
比較的すぐだった。
本当は探鳥するのに最適な場所として有名だけど、
実際に行ったときは、
新しい鳥にほとんど出会わなかった。
タイミングが合わなかっただけだろうけど、
キタコアリクイとの出会いが最高だった。
哺乳類との出会いは難しい
哺乳類を観察するのは、
鳥類を観察するよりずっと難しい。
鳥の方が飛ぶから難しいと思うかもしれないけど、
鳥類に比べたら、
個体数、種類数共に哺乳類は少なく、
かつ夜行性の動物も多いので、
出あいの回数がそもそも非常に少ないというわけだ。
そして、動物たちは、
人間も含め、捕食者から
隠れるように生活をしている。
哺乳類の大きさそのものは、鳥より大きく見やすいと思われるかもしれませんが、
例えば、
アフリカのサバンナのように、
ひらけた場所ですら、
ネコ科などを探すのはたいへん難しいことです。
実際には、
私たちが、森の中で哺乳類を探すということは無理な話で、
出あいはかぎりなく運に頼ることになりますが、
それでも行かないと出会いはないし、
探さないと出会えないので、
フィールドに行ったら、
常に、動き、音、においなどもたよりにして探します。
自分で見つけた時の喜びはまた格別です。
行ったときには、想いを胸に秘め、
幸運を願います。
そして出会えた時は、
おどろかさず、幸せをかみしめながら
その瞬間を楽しんでいます。
20枚くらい撮影した中で、
比較的ぼけていないのをアップします。