サファリ中に、
近距離で生きものと出会えるかどうかは、本当に運次第で、
わだち(轍)がある場所しか通っては行けないルールがある以上、
好き勝手な場所にはいって行けるわけではないので、
動く範囲はいつも限られているが、
いつも通るところでも、
突然のすばらしい出会いがある。
この時はライオンの親子との出会いだった。
子ライオン3頭がもうそれは真剣にじゃれ合っていて、
肉団子状態で、遊んでいた。
母親は少し離れた場所にいて、
時々、子ライオンの1匹が、からみに行っても、
あんた達で遊びなさいと言っているかのように、いなしてかまわず、
母に相手にされなかった子ライオンは、ほかの2匹のところに戻り、また3匹で戯れるみたいな感じで、3匹はじゃれていた。
時刻は夕方。
ンゴロンゴロ自然保護区での一般的なサファリは、
外輪山に囲まれたすり鉢状のクレーターの底でするのだが、
外輪山とクレーターは、700メートル近い高低差があり、
もちろん車での移動だが、
クレーターへ降りたり、クレータから登ったりするときは急勾配で危険なので、一方通行になっている。
そういうわけで、夕方にサファリをほぼ終え、ロッジに向かって帰る時はいつも同じ道、場所を通るのだが、
そんなロッジに帰る間際に、樹林帯の近くで、リラックスした親子に出会った。
常に見晴らしのいい場所にいるライオンだが、
親子連れ、母と子3頭の4頭だったせいなのか、普段ライオンを見かけないような、珍しい場所にいた。
見つけてすぐに、サファリカーのエンジンを止めて、私たちはライオン親子をゆっくり見ていた。
しばらくして、母ライオンが急に動き出し、周りをうかがっていた。
ゆっくりな動きだったが、明らかに何かを気にし始め、
それまでのリラックスモードは一変。
その雰囲気を察し、子ライオンたちも母の周りに集まってきた。
急にライオンの周りの空気が変わったかのように、
緊張感が走っているのが見て取れた。
何かが匂っているのか、見えるのかもしれないが、
私たちにはわからず、様子を見守っていた。
それほど長いことなくして、警戒態勢はとけ、
そして、その後、ライオン親子は、移動しはじめた。
哺乳類は表情がわかりやすいので、
緊張感最大の時、少し緩めた時、すっかり緩んでいる時などの顔つきがだいぶ違う。
ライオンの緊張感ある、凛々しい顔は、実はなかなか見られず、
今でもよく覚えている瞬間だ。
撮影日 2月上旬
撮影地 タンザニア ンゴロンゴロ自然保護区