とっつきにくい植物が、あっという間に楽しくなってくる本です。
花をレストランに見立て、花のつくりとそこにやってくる虫(チョウ、ガ、ハチ、ハエなど)、鳥、変わり種では、オカヤドカリや、オオコウモリなどの関係性、花粉媒介の話が、くりひろげられる。
植物、花が好きな、そして理科に興味のある子(小学校3年生くらいからかなぁ)なら、ちょっと難しいけど、楽しめると思います。
なぜなら、写真がすごいからです。
写真点数も多いけど、その写真ひとつひとつが、素晴らしいのです。フィールドをよく歩いている多田さんだからこそ作れる本だなぁと感心しきりです。
この場面撮るのは、たいへんだったろうなぁという写真が惜しげもなく、多数でてきます。
私は、オオコウモリのレストラン、イルカンダ(という名のマメ科の植物)にオオコウモリが蜜をなめている写真が見られてひとり静かに感激していました。
それは、ヘンテコな名前のイルカンダという植物を初めてを奄美大島でみて(形もヘンテコ)、「オオコウモリが媒介するのだけど、奄美大島にはオオコウモリがもういないから結実しにくい(しない?)かも。」という話を聞いてからずっと気になっていたからです。
多田さんと、ヒメサユリの夜間観察ツアーを行ったことを思い出しました。その頃、夜にスズメガが花粉媒介するはずという予測をたてていて、それを聞いた参加者と多田先生と私と皆で盛り上がり、それを確認するべく翌年、ヒメサユリ夜間観察ツアーというのを作ったのです。
なんだか、えらく大変で、結局ツアーの夜にはスズメがが来るのは見れなかったんですが、そうだよなぁ、一度来て見れたら研究なんて困らないよなぁと皆で学んだのでした。
話がそれましたが、植物と虫との関係性について、オタクな本ですが、だからこそ面白いので、そして難しくないので、ぜひ手に取ってみてください。
図書館にリクエストでもいいのではないでしょうか。
小学生のお子さんがいるなら、夏休みの自由研究にいいかも!と思います。
私は、植物は一番最後に学び出したので、わからないことだらけ。でも、先にフィールドで多田さんから教わりました。なので、この本を読んでいると、多田さんの声が聞こえてきます。
この本のあとがきのような、「植物たちの花粉輸送大作戦」の最後のくだりが、同感です!!
本書63頁より抜粋
『植物は考えることもしなければ感情もありません。植物は、動物とはちがう生き方をしている生き物なのです。花の多様な形や仕組みは、花と虫や鳥などの生き物たちがたがいに深くかかわり合いながら進化してきた「共進化」の結果です。そう思うと、進化って、生き物って、ほんとにふしぎですね!』
多田さんとの出会いの話はこちら