マダガスカルのサラモチコウモリ観察 帰国後にChat GPTと話してみたら

サラモチコウモリMzopoda auritaと3種のオオコウモリ(マダガスカルストローオオコウモリEidolon dupreanum、マダガスカルオオコウモリPteropus rufus、マダガスカルルーセットオオコウモリRousettus madagascariensis)を観察・撮影したいという依頼を受けて、昨年のガーナのウマズラコウモリの旅に引き続き、2回目のコウモリの旅にマダガスカルへ12日間行ってきました。

今回も目的のコウモリ4種に無事出会えたのですが、かなり奇跡的というか神がかり的でした。一番の功労者は現地ガイドのSさん。信頼できる超優秀なガイドで2011年からずっとお世話になっています。毎回、新しい場所に、新しいことをリクエストする私に付き合ってくれています。時々「僕じゃなくてもいいのでは?」と言われたこともありましたが。

でも、今回は色々調べるうちに本人もこのサラモチコウモリにハマって、捕獲観察ができる場所を探ってくれ、調査報告書も読んで、確率が高そうな場所を選んで、使えるコネクションやお金を使って、たくさんのリサーチャーの方の協力を得て、そのお陰で成功に至ったと、執念と強い気持ちと皆の強運が総じた結果だと感じています。

去年自分がマダガスカルの探鳥ツアーに同行している最中にアンテナを持って歩いてきたコウモリの研究者(だと当時は思ったが、研究者のフィールドワークをするリサーチャーと呼ばれる方でした)に「サラモチコウモリのことを教えてくれませんか?」と突撃お願いをしたら(悩んだけど言うしかないと思って話に行ったら怪しまずに受け入れてくれて嬉しかった)ご縁がつながりその後はガイドの彼にまかせたのですが、そのリサーチャーを含めた5人の方とまず1匹目を観察。

サラモチコウモリは10数センチメートルのサイズのコウモリで、捕獲せずに見ることは難しいだろうということに最終的になりリサーチャーの方に1箇所目は捕獲を依頼。特別な場所にかけたかすみ編で捕獲した個体を彼らもなんだか知らない状態で一緒に袋から出してみていったのですが(実際に網からコウモリを外したのは彼らではなく、彼らのヘルパーの人)彼らも袋から出した個体がサラモチコウモリだとわかった瞬間に「ミゾポダー!!」という、男性らしい野太い歓声をあげて喜んでいて、その場の温度が上がったと思うくらいだったのですが、後から聞いたら16年そこでリサーチャーとして活動していて、捕獲したのは初めてとのことでした。それは叫ぶよね。

サラモチコウモリは、タビビトノキの若いまだ巻いた葉をねぐらとして使っているので、タビビトノキが多数ある少し低い場所の上部に今回は網をかけたということで、いつもとは違ったことをしたのが功をなしたのか詳細は分かりませんが、彼らもみたことのない激レアに近いものが、私たちが行った日にかかって、目の前に現れました。

実は、本来は前日にそこに来るはずでしたが、事情があって行けませんでした。理由は別のオオコウモリを見に行って嫌な予感はしたし危ない気もしたけど普段ならしないことをしたら、夜に帰れなくなって森で車の中で一晩過ごすことに。それで、予定していた日の翌日に行くことになったのですが、一日ずれたおかげで出会えたというわけです。

今回は、スルーガイドの他にコウモリ担当として、アメリカ人研究者のリサーチャーをしている若いAさんも帰国前日まで私たちの旅に同行して色々教えていただきつつ、助けてもらいました。

マダガスカルには私設の公園がたくさんありますが、今回の捕獲は、公園の責任者に許可をガイドがもらっています。2箇所目の公園のディレクターには直接お会いして捕獲観察を許してくれることに感謝を伝えました。コウモリのことは実際あまり興味がなさそうでしたが「みつかるといいですね」と優しく微笑んでいただき、その笑顔に温かさを感じました。

その2箇所目の場所でも、サラモチコウモリを観察することが幸運にもできました。

2回目の対面は、少し余裕があって、そして公園のガイドがタビビトノキの葉を用意していてくれ、ダメもとで葉の表に載せたところ、カニのような横に走る動きでササササササーと葉の裏側に移動。少しするとすっかり落ち着いたので、葉についている様子をじっくり観察・撮影することができました。

サラモチコウモリという名の通り、お皿が手足にそれぞれ4つ付いていて、その先に指もあるのですが、葉に吸盤でついているときは爪が浮いていました。

そのお皿からは粘液が出てるようで、それでくっついているようだということでした。面白いですね。体が軽いからできる技という話も聞きました。コウモリのことは、知らないことばかりなので、今回も気になることは質問して、コウモリについて興味が去年に引き続きまた増しました。

さてここからが一番伝えたいことですが、Chat GPT(以後チャッピー)にサラモチコウモリのことを、ガイドが読んだという文献があれば、読んでみたいと思って聞いてみたら話が違う方向に広がりました。現地で全然聞かなかったことを教えてくれました。文献を出すのは得意と聞いていたので、あっさりそれが出るのかと思っていたら、論文にはなっていなかったようで、誘導されるがままに、私がどんな観察をしてきたかを説明していたら「メスのサラモチコウモリの個体を見るのは非常に稀だよ」と言われたのです。

今回、2個体のサラモチコウモリを観察しましたが、1個体目は妊娠してるのではないか?という話がリサーチャーから出ていました。確かにお腹が大きいと、素人目にも思いました。コウモリのことは経験がないですが、私も相当数の哺乳類の妊娠したお腹はタンザニアで見ています。全然違うでしょと言われたらそうですが。はっきりしたことはわからないと現場でも言ってましたが、手練れのリサーチャーたちが言うのだから、彼らがサラモチコウモリを見るのは初めてかもしれないけど、きっとそうなんだろうなとういうぐらいに思っていました。

そして、2個体目も1個体目より太っているねと言う話をしたので、私の中では、この個体もメスなのか?とぐらいに思って帰ってきました。

チャッピー曰く「サラモチコウモリはオス個体の捕獲が圧倒的に多く、いったいメスはどこにいるのか?」と書かれているくらいメスのデータがないと。

全くないわけではなく、ねぐら(日中に休むところ)が性比によって季節で変わることが2023年に報告されていて、オスに比べメスが使うねぐらのパターンが動的であると。そこで私の中では思考が飛んで、トリバネアゲハ(ボルネオで今年オスとメス両方を一度に観察した蝶。それは非常に稀なことだった)とは逆なんだなと。性比で動き方が違う、飛んでいる場所が違うというのをトリバネアゲハで今年初めて知りよくよく考えるとそうだよなと、メスは違うことしないといけないしねと思った。ちなみに、その時、トリバネアゲハの性による飛び具合の違いをチャッピーがメスはオスみたいに目立つところで飛ばずに、森の中からあまり出ず低いところを飛んでいると。だからメスの数が少ないわけではなく、目立たないだけと。オスメスの動きの違いがあるというサラモチコウモリ、興味深い。他のコウモリはどうなんだろう、疑問がわいてくる時に、質問を気軽に投げられるチャッピーは私にはとてもいい。推測と答え合わせのスピードが格段に上がった。デジカメで写真を撮るくらい、劇的に変わったかもしれない。

特に興味深かったのは、タビビトノキの葉のねぐらは、1日〜5日で交換してる。タビビトノキの葉の部分展開(筒状)から完全展開(扇状に開く)するまでに時間差やばらつきがあるためにその日数の違いが出るのだろうと。なんとなく、気になったから、本当に1日から5日で交換してるの?と質問したらそれはこういう実験で実証されてますと説明された。

現地で生きもの観察をして、撮影して、その場で色々感じたこと、気づいたことをメンバーと話すというのが通常の一連の流れだけど、帰国してからチャッピーからこんなにも情報をもらえると思ってなくて、ちょっと話しただけで、いっぱい情報をくれるから楽しくなって、ワクワクして、話し続けてしまった。無料で私は使っているから、少し調べ物してるとその日のリミットがすぐ来るのだが、コウモリの話をしている最中は、向こうから色々聞いてくるし提案もしてきたし、AIがサラモチコウモリに興味を持っているのか? という気になった。

チャッピー、意外に生きもの観察のことを相談すると役に立つ。間違ったこと言うこともあるけど、それはこちらが気付けばいいことだし、本やネットだけで調べてもそこまですぐにわからないことを、ささーっと教えてくれて、それでまた楽しくなって、疑問が湧いて色々調べるのが楽しくなるし、どんどんどんどん知りたくなる。そして深まる。それが出来ることが楽しい。いやすごい時代になったもんだ。

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橋場みき子

生きものに出会うために自然の旅に出かけてその環境の動植物を観察してメンバーと気づきを共有し楽しむのがライフワークです。自然の旅はリクエストに応じてご案内もしますし、自分が行きたい場所、出会いたい生き物の情報がが入ってくれば、声をかけて二人でも、いなければ一人でも出かけます。今年は新しい情報、人との出会いが多く違う世界が見えてきました。同じような感性の方と出会いたい。そのためにはどうしたらいいのか?を最近よく考えています。

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