テーマを選んだ理由
南極半島でもコウテイペンギンを見ている人がいるのを、eBirdのチェックリスト(ある人が観察したリスト)を見ていて気づいた。自分が行く予定エリアの南極半島でも見えるチャンスがあるかもしれない!とそのことに気付いてテンションが上がった。
「コウテイペンギンは、南極大陸の内部にしかいないので、半島だけにいくクルーズの場合、見られない。」と日本の大手旅行社が出した本に書いてあるのを読んですっかり信じていたが、そうではなかった。
eBirdのことは、ひとつ前のこちらのブログをどうぞ。
書籍を読んだ時は疑いもしなかったが、それを書いた人はバードガイドでないし、鳥がとても好きなわけでもないだろうから、観察可能な条件ならずっと鳥を探しているだろう私たちがするだろうことは決してしていないだろうから、そもそも鳥を探している時間が圧倒的に少ないまたは、積極的に探していないはず。ということは、eBirdにデータを上げている人のように観察する私たちには、出会えるチャンスがあるかもしれない? と気付く。
そこで、急にコウテイペンギンとオウサマペンギンの識別(区別)が野外で実際にできるのか? という疑問をいだき、1回目の南極勉強会のテーマとしました。
「南極勉強会」とは
2年延期になっている南極への旅に2022年こそは行くぞ! というスイッチが昨年末にはいり、事前に私が調べたこと、疑問に思ったことなどを、旅に一緒に行く人や南極に興味がある人なら誰とでもと共有して、いろんな人の視点から南極、自然、生きものに迫ろう! と思いはじめたオンライン上での勉強会ですが、それを一部ブログにも書くことに。
オンラインの勉強会では、私が調べたことを伝えて、その後は参加者と共にディスカッションしましたが、私が調べたことについては動画を残す予定です。準備が整いましたらお伝えしますので、気になる方はメルマガにご登録ください。
南極に行くと何種のペンギンが見られるの?
どこから出港するのか、クルーズ船のスケジュール次第ですが、およそ南極と亜南極にクルーズに行くと8種のペンギンに出会えるチャンスがあり、亜南極ってなに? と思ったかもしれないが、その前にペンギンについて、ざっくり話そう。
ペンギンは世界に19(18種という説もあるがここでは議論しない)種いて、全て南半球に生息する鳥。冷たい海の生き物だ、最も緯度の高い場所に生息するのが、赤道直下のガラパゴス諸島の固有種、ガラパゴスペンギン。
ガラパゴス諸島にはプライベートで1回、仕事で1回訪れいずれも観察したが、もう一度、企画手配だけした時に、その年のエルニーニョ現象、海水温の上昇により、ペンギンが低い水温の場所へ生息場所を変えてしまい例年いる場所に行ったのに見られないということがあった。海水温の上昇にともない、魚の種も移動し、海の中の様子も大きく変わるそうで、海水温の上昇だけが移動の理由だけではないと思われるが、繊細な生きもの。
話が早々に脱線したが、
南極で出会えるペンギン、8種は、コウテイ、オウサマ、ジェンツー、ヒゲ、マカロニ、アデリー、マゼラン、イワトビ。
この写真は次の書籍の204と205頁。この本が、クルーズで亜南極、南極に行くなら地域ごとの案内になっていてベストとバードガイドから教わったが、このペンギンが1列に並んでいる頁があるだけでも、南極に行くなら買いだと思います。
コウテイペンギンとオウサマペンギン
皇帝ペンギンと王様ペンギンは、大型ペンギンの2トップ。
「生きものの名前はすべてカタカナで書くのが生物の世界では常識で、漢字を混ぜて書く人はわかっていないから、混ぜて書いているような人や書籍は信用するな、そして絶対にそうするな」というようなことを昔おそわったが、あえて漢字で書いた、イメージ、雰囲気が伝わると思ったから。
コウテイペンギンの体長は、100〜130センチメートル。オウサマペンギンは、85〜95センチメートル。最大50センチ弱、大きさは違う。黄色い部分が2種とも3箇所、くちばしの下側、目の後ろ側頭部、喉下の胸上部にあり、体の小さなオウサマペンギンの方が、黄色い部分は大きい。
野外で見分けられるのか?
広い広い海の中にいる1メートル前後のペンギンがいるのを想像してほしい。距離があったら、点、つぶにしか見えない。いや、気づけばいい方だ。アラスカやスリランカへ、ザトウクジラやシロナガスクジラなどのクジラを探しにいったこともあるが、途方にくれる気分になった。海は全方向に広がり、そして奥行きがあり、広いのだ。何時間も海の波まを見続けていると、波の白さが、何かに見えてくる。20メートル、30メートルサイズのクジラでもそうだったのに、ずっと小さいペンギンが見つけられる可能性は、かなり低そうだ。
海で泳いでいるペンギンも見たことはある。マゼランペンギンとガラパゴスペンギンの小さいサイズの2種だが、かなりの近距離でも波まに隠れたり、後ろ姿で海の色も黒かったら、相当わかりにくい。そして、泳いでいるペンギンは、私たちのペンギンのイメージとは違う。初めて野生で見るペンギンを、体のサイズ感や見た目で識別しようというのはできるかもしれないけど、無理そうだと悟った。
次にどうするか?
もっと、情報がほしいと思って、違う図鑑を読みはじめた。で、イベント後に気づいた。いる場所で判断するのだと。たしかにそうだよね。気づいたら、なんで今まで気づかなかったんだろうと思った。似たような鳥の識別が難しい時は、鳴き声や、分布域、生息地で判断するのが最も一般的。コウテイペンギンとオウサマペンギンも最初からそう考えればよかった。そのことに気づいたのはこの図鑑。
亜南極にオウサマペンギン、南極にコウテイペンギン
南極エリアにコウテイペンギン、亜南極エリアにオウサマペンギンがいると基本考えればいいと気づく。そして、その南極と亜南極を分けるのは、南極収束線で、そこに西から東に吹き続ける偏西風によりできる巨大な海流、南極周極流が流れている。突然、ややこしい南極用語が出てきたが、ここが肝で、実はすごいところなので、読みかえしてついてきてほしい。
南極収束線と南極周極流
南極収束線とは、自然地理学的な地域区分で亜南極と南極をわける境界線。乱暴かもしれないが、ひとことで言ったら、潮境。そこは南極からの冷たい水と亜南極(収束線の北側のエリア)からの暖かい水がぶつかりあう場所で、およそ2度と6度の温度差のある水塊がぶつかりあい、プランクトンが発生する場所。そこを莫大な水量の南極周極流が速いスピードで流れぐるぐる回り続けているから、大量に爆発的にプランクトンが発生し、それを餌にするオキアミが豊富に永続的に育つ。亜南極、南極に生きものがたくさん集まり、繁殖し、生きているのは、この南極周極流が一因だったのだ。
偏西風の役割
南極大陸を中心に常に強い偏西風が、南極大陸の周囲を東から西に、時計回りに吹きグルグル回っている。この偏西風のおかげで、海に大量に空気が吹き込まれるのも、プランクトンが増える理由の一つ。そして、これが、クルーズする時に最も恐るべき船酔いの理由になるドレーク海峡の揺れの一因とわかったら、そのエリアの生きものが見たくて行くのだから、それはもう仕方のないことだと私ははじめて受け入れられた。
水族館にまず見に行こう
ペンギンは可愛いが、それほどペンギン好きでなかったので、水族館で観察に熱中した記憶があまりない。でも、今回コウテイペンギンのことを調べていたら、南極に行く前に、ペンギンにもっと親もう!と思った。ありがたいことに近所の水族館でも出会える。大型のペンギン2種、特にコウテイペンギンがいる水族館は少ないし、オウサマペンギンもたくさんはいないが日本にはいる、これってすごいこと。
日本にはペンギンがたくさん飼われている、いっときは世界で飼育されているペンギンの4分の1が日本にいたそうだが、いまだ世界で一番ペンギンに会える国だろう。日本人は細かい微調整ができるので、飼育が難しいものほど、うまく育てるという話を学生の時に聞いたが、そういうことも関係しているのだと思う。ほぼ南半球にしかいない鳥なのを考えるとそれもすごいこと。とりあえず、近場で小型のペンギンから観察しに行こうと思う。
さいごに
すでに今、南極クルーズ船は出ている。海外にまだ自由に出るのは日本は難しいけども、どんどん世界の状況は変わっている。様子を見ながらそれはそれで、南極調べをすすめたい。
鳥、ペンギンにフォーカスすることで、南極との距離感もグッと縮まったし、いろんなことが見えるようになった、感謝。なかなかモチベーションの上がらなかった、南極勉強だがやっとスタートが切れてよかった。