見えていなかったものは、一人では見えない — パラワンで広がった観察 —

パラワン島でサイチョウを見ていたとき、少し不思議な動きをしていた。

ローカルガイドが車の中から見つけてくれたのは、20メートルはありそうな大きな木だった。

道路脇に車を横付けして、そこから見上げる。

その高い木の中で、パラワンサイチョウが動いていた。

見ているうちに数が増え、何羽かがわらわらと動きながら何かを食べていた。

最初は、葉っぱを食べているように見えた。

そんなはずはないと思った。

これまで何度も見てきたけれど、サイチョウの仲間が葉を食べているところは見たことがない。

気になって見続け、ガイドにも質問を投げかけると、彼が言った。

「イモムシを食べている」

その言葉で、さっきまでの動きの意味が一気に変わった。

葉っぱを食べているように見えていた。

でも実際には、葉の裏のイモムシを取っていた。

だから集まってきたのか、と気づく。きっと虫が大量発生している。

葉っぱが落ちるのは見えた。

でも、そのイモムシ自体は私には最後まで見えなかった。

帰国して写真も見返したが、写ってはいなかった。

別の日、マングローブであるタイヨウチョウを待っていた。

直射日光がそのまま落ちてくる場所で、立っているだけで体力が削られていく。

逆光で、鳥はほとんどシルエットにしか見えない。

少し位置を変えて、逆光から外れる場所に移動する。

わずかに日陰に入り、ようやく落ち着いて見られるようになった。

そのとき、やっと見えた。

3メートルほどの高さにある赤い萼片に、くちばしを差し込んで、蜜を吸っていた。

マングローブの花の蜜を吸うタイヨウチョウがいるんだ、と思った。

それが見えたことが、うれしかった。

日光アレルギーが出て、あとで痒くなるかもしれない。

そんな感覚もあったが、あとで写真にそれが写っていて、十分満たされた。

あとからガイドに聞き、さらに図鑑を見て、そのタイヨウチョウがマングローブに強く結びついた種だと知った。

森で見るタイヨウチョウの仲間もマングローブに来ることはあるけれど、ノドアカタイヨウチョウは違う。

この環境を主な場所として生きている。

直射日光の灼熱の中で見ていたその鳥が、

マングローブという環境と結びついた存在だとわかった。

見えていたものは、同じだったはずなのに、

意味が分かると、より深く見えてくる。

最初から全部見えていたわけではない。

むしろ、見えていなかったものの方が多い。

それでも、違和感を持って見続けたり、

他の人の視点を借りたりすることで、少しずつ見え方が変わっていく。

私は、フィールドに写真を撮りに来ているわけではないのだと思う。

もちろん、写真は撮る。

でもそれは、観察のための補助のようなものだ。

写っていれば嬉しい。

今回、毛虫まで写っていたら最高だったと思う。

それでも、写っていなくてもいいと思えた。

何が起きているのか。

そのつながりが分かっていくことの方が、自分にはずっと大きい。

見えていなかったものは、一人では見えない。

でも、だからこそ、ガイドや同行者と話すことで、観察は広がっていくのだと思う。

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橋場みき子

生きものに出会うために自然の旅に出かけてその環境の動植物を観察してメンバーと気づきを共有し楽しむのがライフワークです。自然の旅はリクエストに応じてご案内もしますし、自分が行きたい場所、出会いたい生き物の情報がが入ってくれば、声をかけて二人でも、いなければ一人でも出かけます。今年は新しい情報、人との出会いが多く違う世界が見えてきました。同じような感性の方と出会いたい。そのためにはどうしたらいいのか?を最近よく考えています。

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